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不法就労と解雇

不法就労と解雇


 そもそも不法就労者(就労資格を有しない在留資格の外国人)であっても、使用者と労働者との間に労働契約が有効に成立している場合、それが在留資格との関係において不法就労であるか否かは、労働契約の効カに影響を与えません。また、労基法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働保護法は、すべての労働者に適用されることから、不法就労者であってもこれら法律で定義する労働者にあたれば原則として適用があると解されています。

 さらに、職業安定法、労働者派遣法、労基法などの労働法規は、日本国内における労働であれば、不法就労者にも適用があるとしています。加えて、労基法3条では、労働者の国籍を理由とする賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的な取扱いを禁止しています。以上によれば、不法就労者との間の労働契約も有効であること、不法就労者に対しても日本の労働法規が原則として適用されることから、解雇権濫用の法理(労働契約法16条)に照らして、解雇の有効性が判断されることになります。

入管法違反との関係

(1)在留資格を偽るなどしていた場合

 在留資格を偽るなどして雇用され、経歴の詐称が発覚したため解雇された場合、解雇権濫用の法理に従っても客観的に合理性がありかつ社会的に相当との判断がなされる可能性があります。なぜなら経歴を偽った点のみならず、入管法により使用者に「3年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金」が科される又は併科される(入管法73条の2)可能性があることからすると、使用者が労働者を解雇することには合理性相当性があると考えられるからです。ただし、このような不法就労が発覚した場合でも、解雇の手続に従わなければならないことから、本来であれば使用者は30日前に予告するか、それに変えて予告手当を支払うかしなければなりません(労基法20条1項)。しかし「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇として、解雇予告手当は不要になると考えられます(労基法20条1項ただし書、3項「除外認定」)。

(2)使用者が不法就労を把握していた場合

 使用者が不法就労を把握しながら、解雇した場合も同様に、解雇権濫用の法理に従って有効性が判断されることになりますが、一律に有効無効をいうことはできず、個別の事案に即して客観的合理性及び社会的相当の判断がなされることになると考えられます。

(3)関連する問題点

 日本に在留したまま裁判で争う場合、在留をどうするかが問題となります。在留期間経過後も滞在を続けていたので、入管法24条により退去強制事由に該当し、退去強制手続が進められることになります。ですから、退去強制手続の中で在留できる方途を探っていくことになります。また裁判で争い、仮に解雇が無効と判断された場合、裁判所がどのように判断するかは難しいところです。裁判所が労働者の地位確認判決を出した場合には不法就労を助長する結果になりかねません。そこで学説上、裁判所は地位確認を認めず、賃金支払については判決時までの部分の支払いは可能だが、将来分については損害賠償(金銭補償)による解決のみ可能とするものがあります。

今日のひとこと

2022/06/14
5日振りの更新です。木曜に突然PCの調子がおかしくなり、翌日全く動かなくなってしまいました。修理に来てもらったのですが全く安定せず、昨日二人がかりで復旧作業半日近くかかってどうにか動くようになりました。しかしこのままの状態は保証できないとのことなので新しいPCを購入することに。。。今の機種は有名メーカーのものではないのですが、スペックもよく今まで1度もフリーズしたことさえなかったお気に入りだったので残念ですが(涙) 新しいPCが届くまでしばらくの間、更新は不定期になります。ごめんなさい🙇
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